遺言書に書いたことがすべて実現されるとは限りません。
定められる内容は、①自分の財産の処分 ②その他に大別できます。
遺言者は自分の財産を、不動産、動産、債権だけでなく、負債についてもその承継処分を遺言できます。また、胎児も相続能力があるので、胎児に対しても遺言することができます。(民法886条)
まずは、①自分の財産の処分についてあげてみみます。
相続分の指定または指定の委託(民法902条)
相続人に対する相続すべき財産の割合は、法定相続分として定められていますが、遺言によってこの法定相続分を変更することができます。
たとえば、配偶者と二人の子供がある場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子供がともに4分の1ずつ(民法900条)ですが、これを遺言で配偶者3分の1と指定することができます。相続人の一部だけ相続分を指定したときは、他の共同相続人の相続分は法定相続分によることになるので、このケースでは子供の相続分も各3分の1となります。
しかし、相続分の指定には限界があって、遺留分の規定に反することができません。妻の遺留分は4分の1ですので、上記のように妻の相続分を3分の1と指定しても遺留分を侵していないため完全に効力を発揮します。
また、相続分の指定を第三者に委託することもできます。
遺産分割方法の指定または指定の委託(民法908条)
遺言中に遺産分割の方法を定めることができます。
具体的には、「長男は自宅と農地を、次男は遺言者が経営する会社の株式を相続する」とか、「長男の分割案に従え」というように、かなり乱暴ですが、遺産分割方法を定めることを第三者に委託することができます。
遺産分割の禁止(民法908条)
相続開始から5年を超えない期間について、遺産の分割を禁止することもできます。全財産についても、個別の財産についてもできます。これは、分割することによって価値が減るような場合に実益があります。
遺贈(民法964条)と寄附行為(民法41条2項)
遺言によって個別財産を遺贈することができます。これを特定遺贈といいます。または、全財産の何分の何というように遺贈をすることもできます。これを包括遺贈といいます。
特別受益者の持ち戻し免除(民法903条3項)
通常、生前贈与を受けた相続人は、相続分の中から贈与分を差し引かれますが、これを差し引かれないように指定することができます。
遺言信託(信託法2条)
遺言によって、遺産を他人に管理または処分をさせることができます。